法学部 教授の海部 健三がフランスの国立研究所INRAEと行った共同研究の一部が、論文として公開されました。この研究では、日本政府によるウナギ資源管理を進めるにあたり、市民はどのような政策を望んでいるのかを調査しました。日本を対象としていますが、世界でも初の研究事例となります。
【概要】
研究チームは今回、ウナギ資源管理に関する日本の政策について、日本国内に在住する19,584名にウェブアンケート調査を行い、1,088名から回答を得ました。回答者は、ウナギの現状に関するビデオを見たのち、ウナギに関する以下の政策への賛否を選択しました。
(1)消費の削減(2030年までに75%削減、50%削減、25%削減、削減しないの4択)
(2)代替への移行(ナマズ、サンマ、アナゴ、代替しないの4択)
(3)完全養殖の研究(推進する、しないの2択)
(4)情報提供(エコラベル、啓発活動、どちらも行わないの3択)
(5)密輸対策(少し厳しくする、かなり厳しくする、現状維持の3択)
(6)ウナギの値段の増加(現状の値段を100gで1280円とし、10%増加、25%増加、50%増加、100%増加、増加させないの5択)
質問は明確に賛成か反対かを問うものではなく、現状維持か変更か、という形式としました。また、一つ一つの政策について選択を迫るのではなく、複数の政策をパッケージとして示し、好みの政策パッケージを選択する手法を用いました。
その結果、回答者は「現状の政策を良しとせず、政策の付加または改定を望んでいる」ことがわかりました。また、消費の削減は望んでいないこと、代替種としてはアナゴが人気であり、完全養殖の研究やエコラベルの推進、密輸への対策強化を支持しいること、蒲焼の値上げは望んでいないことなども明らかになりました。
これらの知見は、ウナギの人工繁殖に関する研究、代替種への移行、国民の意識向上キャンペーンなど、日本における政策パッケージ実施の後押しに役立つものです。しかし、本調査の回答者の意見が日本国民を代表するものではなく、回答者の中には異なる意見を持つグループが見られたことなどから、実際の施策立案に際しては慎重な検討が必要です。
本研究は、2024年7月29日に『Marine Policy』のオンライン版で公開されました。
研究の詳細については、以下の原著論文をご参照ください。
論文タイトル:Public preferences for policies promoting the conservation of a universally threatened species (Anguilla spp.): Insights from a choice experiment in Japan(AI翻訳:世界的に脅かされている種(ウナギ属)の保全を促進する政策に対する一般市民の意識:日本での選択実験からの洞察)
著者:Hermione Froehlicher (INREA); Tina Rambonilaza (INREA); Francoise Daverat (INREA); Kenzo Kaifu (中央大学)
公開日:2024年7月29日
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