2026.01.30

海水浴場の危険をAIが検知
研究者・自治体・ライフガードのコミュニケーションが作る「海辺のみまもりシステム」
AI Detects Hazards at Beaches
"AI-based Coastal Monitoring System" created through communication among researchers, local governments and lifeguards

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Outline

中央大学には、産学官による学際的共同研究を通じて現代社会における喫緊の課題を解決できる知を生み出し,それを社会に還元する拠点「研究開発機構」があります。研究開発機構では、学外資金をもとに「研究ユニット」が設置され、研究者は各ユニットで研究テーマに沿って研究を行います。

石川仁憲研究開発機構機構教授がユニット責任者を務める「ウォーターセイフティ研究ユニット」では、海でのレジャーやプールにおける事故を防ぐことを目的に、AIなどの最先端テクノロジーの研究開発を進めています。

その成果の一つが「海辺のみまもりシステム」です。このシステムは、海水浴場での水難事故を防ぐため、海岸に設置されたカメラが海を撮影し、その画像をAIがリアルタイムに解析します。神奈川県由比ガ浜へのシステム導入やアップデートについては、鎌倉市と地元のライフガードの協力が欠かせませんでした。

実際に由比ガ浜におもむき、海辺のみまもりシステムの仕組みや導入の経緯、AIによって海の安全はどう変わるのか、石川機構教授と鎌倉市観光課の大野博輝氏、鎌倉ライフガード代表の菊地一郎氏にお話を伺いました。

石川 仁憲

中央大学研究開発機構 機構教授

1973年生まれ。東海大学大学院海洋学研究科海洋工学専攻修了。博士(工学)、技術士(建設部門:河川、砂防及び海岸・海洋)。パシフィックコンサルタンツ株式会社、海岸研究室(有)、一般財団法人土木研究センター、中央大学理工学部兼任講師を経て、2019年より現職。専門は海岸工学、水難事故防止技術。

Toshinori Ishikawa
Institute Professor, Research and Development Initiative, Chuo University
Born in 1973. Completed the Graduate School of Oceanography, Tokai University, specializing in Ocean Engineering. Doctor of Engineering, Professional Engineer (Construction Division: Rivers, Erosion Control, and Coastal/Ocean Engineering). After positions at Pacific Consultants Co., Ltd., Coastal Engineering Laboratory (LLC), the Civil Engineering Research Center Foundation, and as an adjunct lecturer at Chuo University’s Faculty of Science and Engineering, assumed current position in 2019. Specializes in coastal engineering and water accident prevention technology.

大野 博輝

鎌倉市 市民防災部 観光課

Hiroki Ohno
Kamakura City, Citizen Disaster Prevention Department, Tourism Division

菊地 一郎

鎌倉ライフガード 代表

Ichiro Kikuchi
Representative, Kamakura Lifeguard


沖に流される危険な「離岸流」や要救助者をAIが検知

AI detects dangerous “rip currents flowing seaward from the shore” and people in need of rescue

―― 海辺のみまもりシステムとはどのようなシステムなのでしょうか?

石川機構教授(以下、敬称略):海岸に設置されたカメラの画像をAIがリアルタイムに解析し、海水浴場の利用者に危険を知らせたり、ライフガードに要救助者を自動で通知したりするシステムです。2025年までに全国6ヶ所の海岸で運用されています。

海のレジャーなどでの海浜事故は毎年1,000件ほど起きており、遊泳中の死者・行方不明者は毎年100人を超えています。遊泳中に溺れる理由のうち約半分が離岸流です。離岸流とは、海岸の波打ち際から沖に向かう流れのことです。利用者が離岸流を目で判断することは難しく、気づかないうちに離岸流によって沖に流されてしまう危険があります。離岸流事故は世界的にも海浜事故の主要因です。

海辺のみまもりシステムでは、離岸流が発生したとAIが判断したら海岸利用者のスマートフォンに通知します。また、要救助者がいる場合にはライフガードのスマートウォッチに通知し、早期の救助救命活動を支援します。こうしたシステムを構築することで、多くの人が安心して海のレジャーを楽しめる環境を整えています。

—— 具体的にはどのようなシステムになっているのですか?

石川:由比ガ浜には公衆トイレに3台のウェブカメラが設置されており、撮影した画像を中央大学のサーバーに送り、そこでAIが離岸流の有無を1秒に1回の頻度でリアルタイムに解析します。海岸の利用者がスマートフォン専用アプリ「Water Safety」をダウンロードしていると、離岸流が発生したことが通知され、どこで離岸流が発生しているのかアプリの画面で見ることができます。

由比ガ浜では、監視所に置かれているモニターに離岸流が起きている具体的なエリアが枠で表示されます。2024年からは、AR機能を使って利用者が持っているスマートフォンの画面越しに離岸流の発生エリアを確認できます。自分のいるところからどの方角で離岸流が起きているのか、よりわかりやすくなりました。

また、沖に流された人など要救助者がいるとAIが判断した場合には、ライフガードのスマートウォッチに通知が届き、いち早く救助活動に移ることができます。

由比ガ浜には海辺のみまもりシステムが2022年に導入され、導入までの2014年〜2019年と比べて2025年の離岸流事故数は34%に減少しました(利用者数による調整後)。隣接する中央・材木座海岸では、導入された2022年移行、離岸流事故は起きていません。

社会実装で重要なのは科学センスよりも現場センス

What matters most in social implementation is on-the-ground intuition, not only scientific insight.

——開発で苦労したこと、工夫したことなどはありますか。

AIは補助ツール、海の安全の追求に終わりはない

AI is an auxiliary tool and the pursuit of marine safety never ends.

泳げない人も海の安全に貢献できる未来へ

Looking toward a future where even those who can’t swim can contribute to ocean safety

終わりに

Finally

Photographer:Kato Hajime Writer & Editor:島田祥輔

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